相続した実家の空き家を売るときの3,000万円控除、令和6年からの変更点
親が1人で暮らしていた実家を相続し、住む予定がないまま空き家になっている。売るかどうかを考え始めたとき、税金の面で知っておきたいのが、国税庁のタックスアンサーNo.3306で説明されている『被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』です。一般に、空き家の3,000万円特別控除と呼ばれています。
この記事では、国税庁のページに書かれている要件を要約し、令和6年1月1日以後の譲渡から変わった点と、国土交通省の資料に載っている件数の推移を整理します。特例を使えるかどうかは個々の事情によって異なります。この記事は判断材料の整理であり、適用の可否は判断しません。
自宅を売るときの3,000万円控除とは別の特例
「3,000万円控除」という言葉は、自分が住んでいた家を売ったときの特例(国税庁タックスアンサーNo.3302など)を指して使われることもあります。この記事で扱うのは、それとは別の、亡くなった方(被相続人)が住んでいた家を相続・遺贈で取得した人が売ったときの特例です。
どちらも譲渡所得から差し引く控除です。税額そのものが3,000万円減るわけではありません。自分の住まいを売るときの特例については、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除と軽減税率の記事で整理しています。
出典: 国税庁『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)
対象になる家の条件
国税庁のページでは、対象となる家屋について次のような条件が示されています。ここでは主なものを要約します。
- 建築の時期昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
- 区分所有でない区分所有建物として登記されている建物ではないこと。
- 住んでいた人相続の開始の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと。
被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の扱いなど、ここで挙げていない要件もあります。実家の状況がどの条件に当たるかは、国税庁No.3306の本文で確認してください。
昭和56年5月31日という日付は、建物の古さを示す目安でもあります。条件に当てはまりそうな実家は、築年数が相当に経っていることになり、売り方(建物を残すか、取り壊すか)を考える場面が出てきます。この点は次の章以降の変更点とつながります。
出典: 国税庁『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)
売る時期の条件:相続から3年目の年末まで、かつ令和9年12月31日まで
売る時期にも条件があります。国税庁のページによると、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売ったものであり、かつ、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。
たとえば相続の開始が年の途中であれば、3年を経過する日を含む年の年末が期限になります。二つの期限のうち早いほうが実質的な期限になるため、相続の開始日から数えた期限と、令和9年12月31日という制度側の期限の両方を手元に書き出しておくと整理しやすくなります。
期限までの時間には、相続登記、家財の片付け、売り方の検討、買主探しといった作業が入ります。期限だけを見て急ぐより、どの作業にどれくらいかかりそうかを先に並べると、実家の価格感を確かめる時期も見えてきます。
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期限から逆算する
売る時期を考える前に、実家の価格帯を知っておく
特例の期限を手元に書き出したら、実家がどのくらいの価格帯で取引されそうかを、外部の一括査定サービスで確認する方法があります。特例の適用可否は税理士や税務署に確認してください。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの売却査定フォームへ進む令和6年1月1日以後の譲渡で変わった2点
国税庁のページでは、令和6年1月1日以後に行う譲渡について、次の2点が示されています。
- 買主側の工事も対象に譲渡の時から、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、家屋が一定の耐震基準を満たすこととなった場合や、家屋の全部の取壊し等が行われた場合も対象になります。
- 相続人が3人以上なら家屋と敷地等を相続・遺贈で取得した相続人が3人以上の場合、控除額は2,000万円までになります。2人以下の場合は3,000万円までです。
1点目は、売主が自分で耐震改修や取壊しをしてから売るのではなく、現状のまま売って買主側で工事をする形も対象になりうる、という変更です。ただし、工事が期限内に終わるかどうかは売主が管理しきれない部分です。買主側の工事を前提にする場合は、契約の段階で工事の内容と時期をどう取り決めるかを、仲介する不動産会社や税理士と確認しておく必要があります。
2点目は、兄弟姉妹など相続人が多い場合に控除の上限が変わるという点です。誰が家屋と敷地を相続するかは遺産分割の話し合いとも関係するため、特例の上限額だけで分け方を決めるのではなく、全体を専門家と確認しながら進めることになります。
二つの変更点は、どちらも「売り方」と「分け方」に関わります。建物を残したまま売るのか、自分で取り壊してから売るのか、買主側の工事に委ねるのか。相続人の誰が家屋と敷地を取得するのか。特例の要件を先に知っておくと、こうした選択肢を並べるときに、税金の面で確認すべき点を落としにくくなります。
出典: 国税庁『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)。改正の概要は 国土交通省『令和5年度税制改正の概要(空き家の発生を抑制するための特例措置の拡充・延長)』(確認日: 2026年9月29日)にも掲載されています。
売却代金1億円以下と、市区町村の被相続人居住用家屋等確認書
売却代金は1億円以下であることが条件です。国税庁のページでは、分割して売った部分や、他の相続人が売った部分も含めて判定すると説明されています。実家を分けて売る場合や、共有で相続して別々に売る場合は、合計で判定される点に注意が必要です。
また、この特例では、家屋の所在地の市区町村長から交付される「被相続人居住用家屋等確認書」が関係します。交付を受けるための申請方法や必要書類は市区町村によって案内が異なるため、実家のある市区町村のページや窓口で確認してください。確定申告の手続きや添付書類の詳細は、国税庁No.3306で確認してください。
確認書の申請でどのような書類が必要になるかは、市区町村の案内で確認する必要があります。空き家になってから時間が経つほど、相続開始の頃の実家の状況を振り返るのに手間がかかりがちです。売ることを決める前でも、実家の状況が分かる手元の資料を一か所にまとめておくと、後の手続きの準備が進めやすくなります。
出典: 国税庁『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)
国交省の資料に見る、この特例の件数と減収額
国土交通省がこの特例措置について作成した資料には、件数の推移が載っています。令和元年度の9,649件から、令和6年度には16,604件になっています。資料上の表記は「件数」で、何の件数かの定義は資料内に明記されていないため、この記事でもそのまま件数と呼びます。
同じ資料には、この特例による減収額(国土交通省から地方公共団体への調査による推計)も載っています。
| 年度 | 件数 | 減収額 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 9,649件 | 192.59億円 |
| 令和2年度 | 9,758件 | 194.84億円 |
| 令和3年度 | 11,944件 | 238.53億円 |
| 令和4年度 | 13,014件 | 259.04億円 |
| 令和5年度 | 13,696件 | 272.61億円 |
| 令和6年度 | 16,604件 | 494.50億円 |
令和6年度は件数も減収額も前年度より大きくなっていますが、その理由は資料には書かれていません。令和6年1月1日以後の譲渡から要件が変わった時期とも重なりますが、この記事では理由を推測しません。
資料にはこのほか、特例の創設から令和5年度までにこの特例措置を受けて譲渡された空き家が約50,000戸という推計や、令和5年住宅・土地統計調査による一戸建ての使用目的のない空き家が約285万戸、そのうち腐朽・破損ありが約72万戸という注記もあります。いずれも概数・推計として示されている値です。
出典: 国土交通省『空き家の発生を抑制するための特例措置』(公表日は資料上で未確認。確認日: 2026年9月29日)
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リビンマッチの買取の入口を見る税理士・税務署・市区町村に確認すること
この特例が使えるかどうかは、家屋の建築時期、相続開始直前の居住状況、売る時期、売却代金、相続人の人数、買主側の工事の有無など、いくつもの条件の組み合わせで決まります。当サイトでは個別の適用可否を判断しません。次のような点を、税理士や税務署、市区町村に確認してください。
- 税理士・税務署実家の条件が要件に当てはまるか、老人ホーム等への入所があった場合の扱い、確定申告の手続きと添付書類。
- 市区町村被相続人居住用家屋等確認書の申請方法、必要書類、交付までの期間。
- 相続人どうし家屋と敷地を誰が相続するか、共有にするか、売却代金をどう分けるか。
- 売却の相手方買主側で耐震改修や取壊しをする場合、工事の内容と時期を契約でどう取り決めるか。
期限のある特例は、情報を集めるほど「早く決めなければ」という気持ちが強くなりがちです。条件を一つずつ確認し、分からない点を専門家に預けるほうが、結果的に落ち着いて判断できます。
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