マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除と軽減税率は、重ねて受けられる
住み替えでは、いまの住まいを売る話と、次の住まいを買う話が同時に動きます。税の特例もこれに合わせて複数あり、名前が似ているうえに数字も似ています。3,000万円、10年、5年。並べて説明されると、どれがどの制度の話なのかが分からなくなります。
この記事が扱うのは、売った側で使う2つの特例、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例です。この2つは重ねて受けることができる関係にあるため、まとめて確認できます。これらと選ぶ関係になる買換えの特例と、売って損失が出た場合の特例は、マイホームの買換えの特例と譲渡損失の特例は、要件を項目ごとに確認するで扱います。内容はいずれも国税庁タックスアンサーに記載されたものです。適用できるかどうかの判断は扱いません。
住み替えで名前の出る3つの特例
- 3,000万円の特別控除
- マイホーム(居住用財産)を売ったときに、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例です(国税庁 No.3302、根拠法令等に措法35が挙げられています)。
- 軽減税率の特例
- マイホームを売って一定の要件に当てはまるときに、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する特例です(国税庁 No.3305、根拠法令等に措法31の3が挙げられています)。
- 買換えの特例
- 特定のマイホームを令和9年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときに、一定の要件のもとで譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です(国税庁 No.3355、根拠法令等に措法36の2が挙げられています)。課税がなくなるのではなく、買い換えた住まいを将来売るときに、繰り延べた分が関わってきます。
3つの関係を先に書いておきます。3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は重ねて受けることができます。一方、買換えの特例は、前の2つの適用を受けていないことが要件に含まれています。つまり住み替えの検討は、「控除と軽減税率の組」と「買換えの特例」のどちらを見るか、という形になります。
この記事では、重ねて受けられる側の2つを順に見ます。所有期間をどこで数えるか、3,000万円の特別控除の要件、軽減税率の特例の要件、という並びです。買換えの特例と譲渡損失の特例は別のコラムに分けました。
参照: 国税庁 タックスアンサー No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月9日)
所有期間は、譲渡した年の1月1日現在で数える
特例の要件には所有期間がよく出てきます。ここでつまずきやすいのが、いつの時点で数えるかです。国税庁は長期譲渡所得について「譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える」もの、短期譲渡所得について「譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下」のものと説明しています。契約日でも引渡日でもありません。
| 区分 | 所有期間の判定 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下 | 30% | 9% |
表は国税庁タックスアンサー No.3208 および No.3211 の記載を基に Real Estate 7 Grid が作成しました。あわせて、平成25年から令和29年までの各年分については、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付し、その額は基準所得税額に2.1パーセントの税率を掛けて計算するとされています。
住み替えでは、売る時期が年をまたぐことがあります。判定の基準日が1月1日である以上、同じ物件でも年が変われば区分が変わる場合がある、という構造は先に把握しておく価値があります。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3208 長期譲渡所得の税額の計算、No.3211 短期譲渡所得の税額の計算(いずれも令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月9日)
3,000万円の特別控除は、所有期間の長短を問わない
国税庁 No.3302 は、マイホーム(居住用財産)を売ったときは所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例がある、と説明しています。同ページは続けて「特例の適用を受けるための要件」という見出しを置き、(1) から (5) までを番号付きで挙げています。(1) は売った資産についての要件で、イからホまでの5つの区分のいずれかに該当する資産であることとされています。区分は、現に自分が住んでいる家屋、以前に住んでいた家屋、それらの家屋とともに売ったその敷地や借地権、それらの家屋を取り壊した場合のその敷地、家屋が災害により滅失した場合のその敷地の5つです(ニとホには、それぞれ契約の時期や売却の期限などの条件が付いています)。
このうち「以前に住んでいた家屋」(区分ロ)には括弧書きが付いており、「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。」と書かれています。「住まなくなってから3年」と縮めて覚えると、年末までの部分が落ちます。あわせて、後段のとおり、住まなくなった日以後の用途については条件が置かれていません。
(2) 以降も、同じ「特例の適用を受けるための要件」の見出しの下に並んでいます。控除の対象から外れる例を集めたものではなく、これらに当てはまることが控除を受けるための条件です。以下は原文の表記のまま引用したものです。
- 要件(2)売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
- 要件(3)売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
- 要件(4)売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
- 要件(5)親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。
要件(5) には説明が続いており、「特別の関係がある人」には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれる、とされています。範囲は親子・夫婦にとどまりません。
この記事の組み立てに関わるのは要件(3) です。3,000万円の特別控除を受けるための要件として、売った年とその前年・前々年に買換えや交換の特例の適用を受けていないことが求められています。買換えの特例の側(No.3355)にも、3,000万円の特別控除や軽減税率の特例の適用を受けていないことが要件として置かれています。双方のページの記載から、この2つは重ねて受ける形にはならない関係だと読み取れます。
なお、要件の末尾には注記があり、住宅借入金等特別控除または認定住宅新築等特別税額控除については、入居した年、その前年または前々年にこのマイホームを売ったときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできないとされています。また、入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年中に、住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡してこの特例の適用を受ける場合にも、住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできないとされています。住み替えで新居に借入を使う場合は、売る側の特例と買う側の控除が関係し合う箇所です。
期限の読み方も分けておきます。No.3302 には、この特例そのものに、いつまでに売った場合に限るという形の適用期限は示されていません。上に全文を引用した区分ロの括弧書きにある、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限は、以前に住んでいた家屋を売る場合に売る側が守る期限であって、制度の適用期限ではありません。これに対して、買換えの特例(No.3355)は令和9年12月31日までに売る場合、空き家の特例(No.3306)は令和9年12月31日までの譲渡と、制度の側に期限が置かれています。同じ「12月31日」でも意味が違います。
同ページは、要件とは別に「適用除外」という項目を置いています。この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋、居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋その他一時的な目的で入居したと認められる家屋、別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋には適用されない、という3つが挙げられています。
手続については、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要とされています。控除があるから自動的に課税されない、という仕組みではありません。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月9日)
軽減税率の特例は、家屋と敷地の両方で10年超
国税庁 No.3305 は、軽減税率の特例について「この軽減税率の特例の適用を受けるには、次の5つの要件すべてに当てはまることが必要です。」としたうえで、所有期間の要件(要件(2))を「売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること(家屋が災害により滅失した場合は、その家屋を引き続き所有していたならば、売った年の1月1日において所有期間が10年を超える家屋の敷地に限ります。)。」と示しています。判定の基準日は長期・短期の区分と同じ1月1日で、期間が10年超に上がり、家屋と敷地の両方について求められる点が違います。括弧書きのとおり、家屋が災害により滅失した場合の敷地についても別に定めが置かれています。
| 課税長期譲渡所得金額(A) | 所得税額 |
|---|---|
| 6,000万円以下 | A×10% |
| 6,000万円超 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
表は国税庁タックスアンサー No.3305 の記載を基に Real Estate 7 Grid が作成しました。この表は所得税額の計算に関するものです。住民税や復興特別所得税は別に扱われるため、「税率10パーセントで済む」という読み方にはなりません。
そして、この記事の組み立ての起点になる記載があります。No.3305 の要件(4) は、「売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例の適用を受けていないこと。ただし、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。」というものです。他の特例と重ねないことを本文で求めたうえで、3,000万円の特別控除との組み合わせだけがただし書きで示されている、という構造です。同ページにはこのほか、売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと(要件(3))、親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと(要件(5))も並んでいます。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月9日)
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要件を確認する前に
特例の要件は、売却価格の見込みと並べると比べやすい
3,000万円の特別控除も軽減税率の特例も、要件は所有期間や居住の履歴で見ます。そのうえで、いまの住まいの価格帯が分かっていると、控除や税率の話を自分の状況に置いて読めます。 ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの売却査定フォームへ進む相続した家を売る場合の3,000万円とは、別の特例
検索していると、相続した家について3,000万円という数字が出てくる資料に行き当たります。国税庁 No.3306 は、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例を扱っており、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋等を平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(注)まで控除することができる、と説明しています。この(注)は「令和6年1月1日以後に行う譲渡で被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなります。」という内容です。相続人が3人以上の場合、上限は3,000万円ではありません。
控除額の上限が同じで、根拠法令等の表示にも同じ条番号が並ぶため紛らわしいのですが、自分が住んでいた家を売る場合(No.3302)と、相続した被相続人の家を売る場合(No.3306)は別の特例で、要件も適用期限も異なります。住み替えで参照するのは前者です。
参照: 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月9日)
資料を見るときは、版の日付を先に確認する
税の特例は、適用期限や要件が改正で動きます。国税庁のタックスアンサーには、ページごとに「令和◯年◯月◯日現在法令等」という表示があります。この記事で参照したページは、いずれも令和8年4月1日現在法令等の表示があるものです。
解説記事や古い資料を読むときは、内容の前にこの日付を確認します。日付が違えば、適用期限が更新されている可能性があります。特に買換えの特例のように期限が定められている制度では、期限の年だけが古いまま引用されていることがあります。
手元で確認しておく項目
特例の要件に出てくる項目を、判断せずに書き出しておきます。ここで該当するかどうかを決める必要はありません。窓口で確認するときに、そろっていると話が早く進む項目です。
- 取得の時期いまの住まいをいつ取得したか。売買契約書と登記事項証明書で日付を確認します。
- 売却の予定時期いつ売る想定か。その年の1月1日時点で所有期間が何年になるかを控えます。
- 居住していた期間いつからいつまで住んでいたか。住まなくなった日がある場合はその日付。
- 譲渡対価の見込み売却価格の見込み。手取り額ではなく譲渡対価の額として控えます。
- 新居の条件買換えを考える場合の床面積と土地面積、購入の時期。
- 住宅ローン新居の借入の償還期間。損失が出る場合の制度の要件に関わります。
この6項目のうち4番目の譲渡対価の見込みは、どの特例を見るかを整理するときの手がかりになりやすい項目です。空欄のままでも確認は進められますが、埋まっていると比べる範囲を絞りやすくなります。
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住み替えの順番を決める
新居の予算は、いまの家の価格帯から決まる
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このコラムは、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例に絞って整理しました。カテゴリの一覧はT08 住み替え × マンションから辿れます。