財産分与を家庭裁判所へ請求できる期間は5年になった。共有のまま残すとどうなるか

期間 名義 共有 5年 762条 256条 条文を分けて読む

離婚とマンションの話を調べると、「財産分与の請求は離婚から2年まで」と書かれた記事が数多く出てきます。ただ、2026年9月9日時点でe-Gov法令検索に表示される民法第768条第2項は、「五年」と書かれています。

2026年4月1日に施行された民法等の改正の中に、財産分与に関する見直しが含まれています。数字が変わったことは、住まいをどう扱うかの考え方にも関わります。この記事は、条文と公的機関の記載を並べて整理するものであり、個別の事情への当てはめや、分け方の結論を示すものではありません。

混ざりやすい4つの論点

財産分与の請求
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるとされています。協議が調わないときなどに家庭裁判所へ協議に代わる処分を請求できる期間が、条文上「離婚の時から五年」とされています。
名義
婚姻前から有する財産、婚姻中に自己の名で得た財産は特有財産とされ、いずれに属するか明らかでない財産は共有に属するものと推定される、という規定が別に置かれています。
共有
共有物については、各共有者がいつでも分割を請求できるとされる一方、5年を超えない期間で分割をしない旨の契約もできるとされています。
住宅ローン
金融機関との契約であり、取扱いは契約内容と金融機関の判断によります。当事者間の合意だけで決まる部分ではありません。

この4つは、話し合いの場ではひとかたまりに見えます。しかし条文の上では別々の場所に置かれています。分けて読むと、いま決められることと、決められないことの境目が見えてきます。

民法768条の条文を、そのまま読む

民法(明治29年法律第89号)第768条は標題を「財産分与」とし、第1項で「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と定めています。

第2項は「前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない。」としています。

第3項は「前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。」と定めています。

第3項は2つの文でできています。前段は、家庭裁判所が考慮する事情を幅広く並べたうえで、分与をさせるべきかどうかと、分与の額および方法を定める、としています。後段は、そのうち「寄与の程度」について、その程度が異なることが明らかでないときは相等しいものとする、と定めています。

注意したいのは、後段が相等しいとしているのは寄与の程度であって、分与の割合そのものではない、という点です。第3項が挙げる考慮事情には、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、協力および扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業および収入その他一切の事情も含まれます。したがって「財産分与は必ず2分の1になる」と読むことはできません。どのような分与になるかは、寄与の程度が異なることが明らかかどうかも含め、個別の事情をもとに家庭裁判所が判断する事柄であり、この記事で当てはめることはできません。

条文の確認: e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第768条(2026年9月9日時点で表示される条文/確認日: 2026年9月9日)

「2年」と書かれた解説が多い理由

法務省は、民法等の一部を改正する法律について、成立が令和6年5月17日、公布が令和6年5月24日、法律番号が令和6年法律第33号、施行日が令和8年(2026年)4月1日であると案内しています。改正の対象として「親権・監護、養育費、親子交流、養子縁組、財産分与等に関する民法等の規定を見直す」と記載されています。

つまり、財産分与に関する規定はこの改正の対象に含まれており、条文の数字は現行版で確認する必要があります。ウェブ上の解説記事には施行前に書かれたものが多く残っているため、年数の記述が古いまま参照されていることがあります。

なお、施行日より前に離婚した場合の取扱いについては、経過措置の定めを確認する必要があります。この点は法務省の資料や改正法の附則で確認する事柄であり、この記事では年数を書きません。手元の事情に関わる場合は、下記の法務省ページから資料を確認するか、弁護士へ相談してください。

出典: 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕」(令和6年法律第33号)(確認日: 2026年9月9日)

期間が延びても、住まいの条件は時間とともに動く

条文上の期間が長くなったことは、家庭裁判所へ請求できる期間の話です。マンションそのものの条件が固定されるわけではありません。相場、管理費や修繕積立金の改定、大規模修繕の実施、住宅ローンの残高、居住の実態。これらは時間とともに変わります。

ですから、期間の長短は、話し合いを急ぐ理由にも、先送りする理由にもなりません。判断の材料が古くなると、話し合いのたびに前提を作り直すことになります。前提となる数字を一度そろえておくことが、結果的に手間を減らします。

名義がどちらかという話と、分与の話は別に置かれている

民法第762条は標題を「夫婦間における財産の帰属」とし、第1項で「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」、第2項で「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。」と定めています。

登記簿に記載された名義は、この帰属の話に関わります。一方、財産分与は第768条に置かれた別の制度です。条文の場所が違うため、「名義が自分だから分与の対象にならない」「名義が相手だから関係がない」という単純な読み方はできません。

具体的な物件がどちらに当たるのか、どこまでが分与の対象になるのかは、事情を踏まえた法的な判断になります。この記事では判断を示しません。判断が必要な場面では、弁護士や家庭裁判所の手続を通じて確認することになります。

条文の確認: e-Gov法令検索「民法」第762条(確認日: 2026年9月9日)

共有のまま残すと、別の条文が関わってくる

話し合いがまとまらないとき、あるいは子どもの学校の都合などで住み続けるとき、マンションを共有のまま残す選択が出てきます。この場合は、共有についての規定が関わります。

民法第256条は標題を「共有物の分割請求」とし、第1項で「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。」、第2項で「前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。」と定めています。

ここにも「五年」が出てきますが、第768条第2項の五年とはまったく別のものです。第768条第2項は家庭裁判所へ協議に代わる処分を請求できる期間、第256条第1項ただし書は分割をしない旨の契約の上限期間です。数字が同じでも意味が違うので、話し合いの場でどちらの話をしているのかは、そのつど確かめる価値があります。

条文の確認: e-Gov法令検索「民法」第256条(確認日: 2026年9月9日)

共有物の負担についての規定もある

民法第253条は標題を「共有物に関する負担」とし、第1項で「各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。」、第2項で「共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。」と定めています。

マンションの場合、管理費、修繕積立金、固定資産税といった支出が毎月・毎年発生します。共有のまま残すということは、これらの負担が続くということでもあります。第2項には「相当の償金を支払って」という要件が置かれており、支払いが滞れば自動的に持分が移るという書き方にはなっていません。

この条文をどう使うか、使えるかは個別の判断になります。この記事で言えるのは、共有のまま残す選択には、費用の負担をどう分けるかという実務が付いてくる、という点までです。

条文の確認: e-Gov法令検索「民法」第253条(確認日: 2026年9月9日)

2つの「五年」を並べて確かめる

条文 何についての期間か 起算点 間違えやすい点
民法768条2項 協議が調わないときなどに、家庭裁判所へ協議に代わる処分を請求できる期間。 離婚の時。 施行前に書かれた解説には「2年」と記載されているものがある。現行の条文で確認する。
民法256条1項ただし書 共有物について、分割をしない旨の契約ができる期間の上限。 契約の時(更新の場合は更新の時)。 財産分与の期間とは無関係。共有を続ける取り決めの話。

数字が同じだと、会話の中で入れ替わります。表にして手元に置いておくと、どちらの話をしているのかを確かめながら進められます。

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話し合いの前提を置く

分け方を決める前に、いまの価格帯を置く

名義と分与は別の問題です。共有のまま残すか、どちらかが持つか、売るか。どの案でも、いまの価格が分からないと比べられません。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。

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登記は、合意とは別の手続として残る

話し合いで結論が出ても、登記簿の記載はそれだけでは変わりません。財産分与に伴う所有権の移転をどう扱うか、必要な書類は何か、費用はどれくらいかは、手続の側の話です。

登記の要否と手順は、法務局の窓口や司法書士へ確認します。この記事では申請書の書き方や必要書類の一覧は扱いません。事案によって必要な書類が変わるため、実際の手続は専門の窓口で確認してください。

確認の順番としては、まず現在の登記名義と持分がどうなっているかを把握することから始まります。登記事項証明書は法務局で取得できます。手元の記憶と登記簿の記載が食い違っていることもあるため、資料で確かめておくと話が進めやすくなります。

住宅ローンは金融機関との契約として扱う

住宅ローンの名義、連帯債務、連帯保証の取扱いは、金融機関との契約に基づく事柄です。当事者間の合意でどう決めても、契約の相手方である金融機関の取扱いは別に確認する必要があります。

この記事では、外せる、外せない、借り換えれば解決する、といった書き方はしません。契約書に何が書かれているか、どのような手続が用意されているかは金融機関ごとに異なります。手元の契約書(金銭消費貸借契約書、抵当権設定契約書など)を確認したうえで、借入先へ問い合わせる流れになります。

確認しておきたいのは、借入の名義、連帯債務や連帯保証の有無、残高、返済口座、団体信用生命保険の扱いです。これらが分からないまま住まいの案を並べても、比較になりません。

共有のまま残したときに起きること

共有のまま残す案は、その場では結論を先送りできます。ただ、時間が経つほど、次のような場面で相手方の関与が必要になります。売却する場合、共有者が誰であるかは登記簿に記載されているため、手続の中で確認されます。大規模な修繕や設備の更新、賃貸に出す場合の判断も、共有であることが関わってきます。

さらに、連絡が取りづらくなること、住所が変わること、相続が発生することも起こり得ます。共有のまま残す選択をするなら、その状態をいつまで続けるのか、費用をどう分担するのか、連絡の方法をどうするのかを、書面にしておく実務が伴います。書面の作り方は弁護士や公証役場へ相談する事柄です。

感情の話と、数字の話を同じ時間に置かない

住まいの話は、生活の記憶と結びついています。だからこそ、金額の話と経緯の話が同じ場で混ざると、進みにくくなります。数字を確認する時間と、これからの生活を話す時間を分けるだけでも、話の運び方が変わります。

数字の側でそろえておけるのは、価格の見込み、住宅ローンの残高、管理費や修繕積立金、固定資産税、引っ越しにかかる費用です。これらは事実として調べられます。事実がそろっていると、意見の違いがどこにあるのかも見えやすくなります。

話し合いの前に、手元でそろえられる資料

  • 登記事項証明書名義、持分、抵当権の設定状況を確認します。法務局で取得できます。
  • 住宅ローンの資料契約書、返済予定表、残高の分かる書類。名義と保証の形を確認します。
  • 管理関係の資料管理費、修繕積立金の金額と改定の予定、長期修繕計画の有無。
  • 税の資料固定資産税・都市計画税の課税明細書。名義人あてに届きます。
  • 購入時の資料売買契約書、重要事項説明書、諸費用の明細。取得の経緯が分かる資料です。

資料をそろえること自体は、どの案を選ぶかとは関係なく必要になります。共有のまま残す場合も、どちらかが住み続ける場合も、売る場合も、同じ資料を見ることになります。

相談先を、目的ごとに分ける

  • 分与の判断弁護士、家庭裁判所の手続。個別の当てはめが必要な部分です。
  • 登記法務局の窓口、司法書士。名義の変更が必要かどうかを含めて確認します。
  • 住宅ローン借入先の金融機関。契約書を手元に置いて問い合わせます。
  • 税の取扱い税務署、税理士。財産分与や売却に伴う税の扱いはここで確認します。

窓口が分かれているのは、判断できる範囲が分かれているからです。1か所ですべてが決まるわけではありません。逆に言えば、どの窓口へ何を聞くのかを整理しておくと、限られた時間を有効に使えます。

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このコラムは、条文の側から期間と共有の論点を整理したものです。名義、残債、居住状況といった手元の条件から住まいの扱いを考える記事も、同じカテゴリにまとめています。カテゴリの一覧はT06 離婚 × マンションから辿れます。

フォームへ進む前のマンションメモ

  • 物件所在地、専有面積、間取り、築年、階数、管理形態。
  • 名義登記上の名義と持分。抵当権の設定状況。
  • 借入残高、返済期間、名義、連帯債務や連帯保証の有無。
  • 時期いつまでに方向を決めたいか。動かせない予定があるか。

価格の見込みを確認するときも、この4つがそろっていると話が早く進みます。分からない項目は空欄のままで構いません。空欄が分かっていること自体が、次に何を調べるかの手がかりになります。

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