マイホームの買換えの特例と譲渡損失の特例は、要件を項目ごとに確認する
住み替えで売った側に使う特例のうち、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は重ねて受けられます。これに対して、特定のマイホームを買い換えたときの特例と、買換えで譲渡損失が生じたときの特例は、前の2つとは選ぶ関係になります。
この記事が扱うのは、その選ぶ側の2つです。どちらも国税庁のページが要件を番号付きで並べており、買換えの特例は12項目、譲渡損失の特例は要件と適用除外が別の節に置かれています。要約すると条件が抜け落ちるため、国税庁の項目立てのまま並べます。重ねて受けられる側の2つはマイホームを売ったときの3,000万円の特別控除と軽減税率は、重ねて受けられるで扱います。適用できるかどうかの判断は扱いません。
2つの制度の位置づけと、所有期間の数え方
買換えの特例(国税庁 No.3355)は、特定のマイホームを売って代わりのマイホームに買い換えたときの特例です。譲渡損失の特例(同 No.3370)は、マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたときの特例です。どちらも買換えが前提になっています。
この2つは、3,000万円の特別控除や軽減税率の特例と重ねて受ける形にはなりません。買換えの特例の要件にも、譲渡損失の特例の適用除外にも、売った年やその前年・前々年にそれらの適用を受けていないことが置かれているためです。
要件を読む前に、所有期間の数え方だけ確認しておきます。国税庁は長期譲渡所得について「譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える」もの、短期譲渡所得について「譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下」のものと説明しています。契約日でも引渡日でもありません。この記事に出てくる所有期間の要件は、いずれもこの数え方が前提です。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3208 長期譲渡所得の税額の計算、No.3211 短期譲渡所得の税額の計算(いずれも令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月9日)
参照: 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例、No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(いずれも令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月9日)
組み合わせを一枚で見る
| 組み合わせ | タックスアンサーの記載から読み取れる関係 |
|---|---|
| 3,000万円の特別控除 + 軽減税率の特例 | 重ねて受けることができる(No.3305に明記)。 |
| 3,000万円の特別控除 + 買換えの特例 | 買換えの特例の要件に、3,000万円の特別控除の適用を受けていないことが挙げられている(No.3355)。 |
| 軽減税率の特例 + 買換えの特例 | 買換えの特例の要件に、軽減税率の特例の適用を受けていないことが挙げられている(No.3355)。 |
表は国税庁タックスアンサー No.3302、No.3305、No.3355 の記載を基に Real Estate 7 Grid が作成しました。住み替えの検討では、この表のどの行を見るかによって、次に確認する要件が変わります。どの行を見ることになるかは、売却価格の見込みや新居の条件がある程度定まってくると整理しやすくなります。
買換えの特例は、課税を将来に繰り延べる仕組み
国税庁 No.3355 は、特定のマイホームを令和9年12月31日までに売って代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる、と説明しています。ここは読み方を間違えやすい箇所です。繰り延べであって、課税がなくなる仕組みではありません。買い換えた住まいを将来売るときに、繰り延べた分が関わってきます。
国税庁のページは、この特例の「特例の適用を受けるための要件」として (1) から (12) までの12項目を挙げています。項目数が多く、要約すると条件が抜け落ちるため、ここでは12項目を4つのまとまりに分けて並べます。
- 前提(要件(1)(2))令和9年12月31日までにマイホームを売ること。売ったマイホームと買い換えたマイホームが、いずれも日本国内にあるものであること。
- 売る側(要件(3)(4)(5))売った人の居住期間が10年以上で、かつ売った年の1月1日において家屋とその敷地の所有期間がともに10年を超えること。親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。売却代金が1億円以下であること。一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合、1億円以下かどうかの判定は、売却した年の前々年から翌々年までの5年間に分割して売却した部分も含めた売却代金で行うとされ、後から合計額が1億円を超えたときは、その売却の日から4か月以内に修正申告書の提出と納税が必要になると記載されています。
- 買う側(要件(6)から(11))売った年の前年から翌年までの3年の間に買い換え、取得した時期に応じた期限までに住むこと。買い換える建物の床面積が50平方メートル以上で、買い換える土地の面積が500平方メートル以下であること。建築後使用されたことのない家屋を令和6年1月1日以後に居住の用に供する(供する見込みの)場合は、一定の省エネ基準に関わる「特定居住用家屋」に該当しないこと。同じく令和10年1月1日以後の場合は、災害危険区域等内において建築された一定の家屋に該当しないこと。中古住宅の場合は、耐火建築物かどうかの区分に応じて、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または一定の耐震基準を満たすものであることが求められます。
- 他の特例との関係(要件(12))ページの記載どおりに引くと「売った年、その前年および前々年にマイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例を除きます。)またはマイホームを売ったときの軽減税率の特例もしくはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。また、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けないこと。」です。
要件(12) で読み落としやすいのは、冒頭にある期間の限定です。対象は売った年とその前年および前々年であり、過去にいちど3,000万円の特別控除を受けたら以後ずっと買換えの特例が使えない、という書き方ではありません。あわせて、括弧書きで被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例が除かれていること、末尾に譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例が並んでいることも、後の章とつながる箇所です。
要件(1) の令和9年12月31日という期限は、国土交通省が公開している居住用財産の譲渡に関する特例措置の一覧でも、居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限として同じ日付で記載されています。この一覧には、一定の災害の危険がある区域内で建築または取得された新築住宅に令和10年1月1日以降に入居する場合の取扱いに関する記載もあります。区域の範囲は国土交通省の資料で確認してください。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例(令和8年4月1日現在法令等)、国土交通省 住宅局「居住用財産の譲渡に関する特例措置」(いずれも確認日: 2026年9月9日)
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特例を比べる前に
どの特例を選べるかは、売却価格の見込みから決まる
買換えの特例には譲渡対価1億円以下という要件があります。特例を比べる前に、売却価格の見込みを持っておくと整理しやすくなります。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの売却査定フォームへ進む売って損失が出る場合の制度も並べておく
住み替えは、売って利益が出る場合ばかりではありません。国税庁 No.3370 は、マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたときの特例を説明しています。旧居宅の譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除でき、控除しきれない部分は翌年以後3年内に繰り越して控除できる、という内容です。
このページは「特例の適用を受けるための要件」と「特例の適用除外」を別々の節に分けています。まず要件です。ページは「この特例の適用を受けるためには、次の(1)および(2)の要件すべてに当てはまることが必要です。」としており、(1) は譲渡資産(旧居宅)、(2) は買換資産(新居宅)についての条件です。旧居宅は、売った年の1月1日において所有期間が5年を超えていること。新居宅は、譲渡の年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に取得した床面積50平方メートル以上の家屋であること、取得した年の翌年12月31日までに居住の用に供すること(または供する見込みであること)、取得した年の12月31日において償還期間10年以上の住宅ローンを有することです。
要件とは別に、適用除外の節があります。ここが読み落とされやすい箇所です。ひとつ目は「損益通算および繰越控除の両方が適用できない場合」で、4つ挙げられています。旧居宅の売主と買主が親子や夫婦など「特別の関係」にある場合。「旧居宅を売却した年の前年および前々年に次の特例を適用している場合」として、軽減税率の特例、3,000万円の特別控除、買換えの特例、交換の特例が並んでいる場合。旧居宅を売却した年またはその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例の適用を受ける場合または受けている場合。売却の年の前年以前3年内の年に生じた他のマイホームの譲渡損失について、この損益通算の特例の適用を受けている場合です。
ふたつ目は「繰越控除が適用できない場合」で、3つ挙げられています。旧居宅の敷地の面積が500平方メートルを超える場合、繰越控除を適用する年の12月31日において新居宅について償還期間10年以上の住宅ローンがない場合、合計所得金額が3,000万円を超える場合です。敷地面積についてページは「旧居宅の敷地の面積が500平方メートルを超える場合は、500平方メートルを超える部分に対応する譲渡損失の金額については適用できません。」としており、特例そのものが使えなくなるという書き方ではありません。合計所得金額についても「合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できません。」とされています。
整理すると、合計所得金額3,000万円は要件ではなく適用除外の側にある条件で、しかも超えた年だけが対象外という限定がつきます。また、ひとつ目の適用除外に当たると損益通算も繰越控除もできないのに対し、ふたつ目に当たるのは繰越控除だけです。前年および前々年に3,000万円の特別控除や軽減税率の特例を使っていると、この特例では損益通算の段階で対象外になります。利益が出たら3,000万円の特別控除、損が出たらこの特例、と単純に並べられない理由がここにあります。
なお、このページは概要で、旧居宅を令和9年12月31日までに譲渡して新たに新居宅を購入した場合を対象としています。
この制度は買換えが前提になっています。売るだけの場合に何が使えるかは、別の類型を確認する必要があります。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月9日)
「10年」も「3,000万円」も、2種類ある
住み替えの記事で読者が混同しやすい数字を、ここで分けておきます。
- 10年(その1)軽減税率の特例の所有期間。売った年の1月1日において家屋と敷地がともに10年超(No.3305)。
- 10年(その2)買換えの特例の要件。居住期間が10年以上、かつ所有期間が10年超(No.3355)。所有期間と居住期間は別の数え方です。
- 3,000万円(その1)マイホームを売ったときの特別控除の上限額(No.3302)。
- 3,000万円(その2)譲渡損失の特例の「特例の適用除外」に出てくる合計所得金額の基準(No.3370)。要件ではなく適用除外の側にあり、超える年がある場合は、その年のみ繰越控除が適用できません。控除額とは無関係の数字です。
- 5年長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分。譲渡した年の1月1日現在の所有期間(No.3208・No.3211)。
同じ数字が別の意味で出てくるため、資料を読むときは「何の10年か」「何の3,000万円か」を書き添えながら進めると、後から見返したときに混ざりません。
資料を見るときは、版の日付を先に確認する
税の特例は、適用期限や要件が改正で動きます。国税庁のタックスアンサーには、ページごとに「令和◯年◯月◯日現在法令等」という表示があります。この記事で参照したページは、いずれも令和8年4月1日現在法令等の表示があるものです。
この2つは、どちらも制度の側に令和9年12月31日という期限が置かれています。期限のある制度は、古い資料で期限の年だけが古いまま引用されていることがあります。内容を読む前に版の日付を確認してください。
買換えを前提に確認しておく項目
この2つの特例の要件に出てくる項目を、判断せずに書き出しておきます。ここで該当するかどうかを決める必要はありません。窓口で確認するときに、そろっていると話が早く進む項目です。
- 売却の予定時期いつ売る想定か。その年の1月1日時点で所有期間が何年になるかを控えます。
- 居住していた期間いつからいつまで住んでいたか。居住期間と所有期間は別に数えます。
- 譲渡対価の見込み売却価格の見込み。手取り額ではなく譲渡対価の額として控えます。分割して売っている部分があればその分も。
- 新居の条件床面積と土地面積、取得の時期、入居の予定時期。中古住宅の場合は建築の時期。
- 住宅ローン新居の借入の償還期間と、年末に残高があるかどうか。
- 前年・前々年の特例の利用歴3,000万円の特別控除、軽減税率の特例、買換えや交換の特例を受けたかどうか。
項目が埋まっていなくても確認は進められます。そろっていると、どの要件から見るかを絞りやすくなります。
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売る側の数字から置く
買換えの話は、いまの住まいの価格帯から始まる
買換えの特例も譲渡損失の特例も、売った結果が出発点になります。いまの住まいの価格帯が分かると、新居の条件と並べて考えられます。適用の可否は税務署・税理士へ確認します。 ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの売却査定フォームへ進むあわせて読む
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このコラムは、買換えの特例と譲渡損失の特例に絞って整理しました。カテゴリの一覧はT08 住み替え × マンションから辿れます。