管理会社を比べる前に、登録制度でオーナーが確認できることを整理する
管理会社の比較は、たいてい手数料率の話から始まります。5%か、4%か、更新事務手数料は別か。もちろん費用は重要ですが、率だけを並べても、その会社が何をどこまでやるのかは見えてきません。
先に見ておきたいのは、会社ごとの営業条件ではなく、制度としてあらかじめ決まっている部分です。賃貸住宅管理業には登録の制度があり、オーナーが受け取れる書面や報告の枠組みが法律に書かれています。ここを押さえると、各社の提案書を同じ物差しで読めるようになります。
登録制度から読み取れる4つのこと
- 登録の要否
- 賃貸住宅管理業を営もうとする者は国土交通大臣の登録を受けることとされ、国土交通省令で定める規模未満の場合が除かれます。その規模は「二百戸」と省令に書かれています。
- 登録の期限
- 登録は5年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって効力を失うと定められています。登録は一度取れば永続するものではありません。
- 受け取る書面
- 国土交通省は、契約締結前に報酬や管理業務の内容・実施方法等について書面を交付すること、契約締結時に相手方へ書面を交付することを、管理業者の業務として挙げています。
- 報告と分別管理
- 委託者への定期報告と、受領した金銭を自己の固有財産等と分別して管理することが、法律の条文に置かれています。
この4つは、担当者の熱意や提案書の見栄えとは別のところにある枠組みです。会社ごとの違いを比べる前に、どの会社にも共通して当てはまる部分を先に確認しておくと、比較の土台がそろいます。
200戸という線引きは、法律ではなく省令に書かれている
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)第3条第1項は、「賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。ただし、その事業の規模が、当該事業に係る賃貸住宅の戸数その他の事項を勘案して国土交通省令で定める規模未満であるときは、この限りでない。」と定めています。登録の義務が原則として置かれ、規模による除外がただし書に置かれている構造です。
その規模を定めているのが、同法施行規則(令和2年国土交通省令第83号)第3条です。条文は「法第三条第一項の国土交通省令で定める規模は、賃貸住宅管理業に係る賃貸住宅の戸数が二百戸であることとする。」と書かれています。よく聞く「200戸」という数字の出どころは、法律本体ではなくこの省令です。
数字がどこに書かれているかを知っておくと、説明を受けたときに確かめやすくなります。法律の条文と、省令の条文と、国土交通省が作成した解説ページは、それぞれ役割が違います。管理会社から制度の話を聞いたときも、どこに書かれている内容なのかを分けて聞けます。
条文の確認: e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和二年法律第六十号)」第3条、e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則(令和二年国土交通省令第八十三号)」第3条(確認日: 2026年9月9日)
戸数の数え方には「自己所有物件を除く」という限定がある
国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトは、登録の対象を「賃貸住宅管理戸数(自己所有物件の管理除く)200戸以上の賃貸住宅管理業者」と記載しています。ここで落としやすいのが、かっこ書きの限定です。
つまり、会社が自分で所有している賃貸住宅を自分で管理している分は、この戸数に入らない、という整理です。「うちは1,000戸を扱っています」という説明を聞いても、その内訳が自社所有か受託管理かで、登録制度上の位置づけは変わります。数字の大小ではなく、内訳をそろえて聞くほうが実務的です。
なお、200戸未満の事業者は登録義務の対象外です。義務の対象外であることと、登録できないこととは別で、任意で登録を受けることもできます。登録がないことをもって違法だと決めつける読み方は、条文の書き方と合いません。小規模でも丁寧に管理する会社はあり、規模が大きくても相性が合わないことはあります。
記載の確認: 国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「賃貸住宅管理業登録の方法」(確認日: 2026年9月9日)
登録は5年ごとに更新される
同法第3条第2項は「前項の登録は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。」と定めています。国土交通省のポータルサイトも「登録の有効期間は5年間です」と記載しています。
同じページには、更新の手続について「有効期間満了日の90日前から30日前まで」に更新申請を行うこと、「申請受理から登録までの標準処理期間は90日」であることが書かれています。制度の側にもスケジュールがある、ということです。
オーナーにとって関係があるのは、管理委託契約の更新時期と、登録の有効期間は別物だという点です。契約の更新時期に合わせて条件を見直すとき、相手方の登録がいつまでのものかは、あらかじめ確認できる情報のひとつになります。
条文と記載の確認: e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」第3条第2項、国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「賃貸住宅管理業登録の方法」(確認日: 2026年9月9日)
登録の有無は、オーナー自身が調べられる
国土交通省は「賃貸住宅管理業者に関する企業情報につきましては、『建設業者・宅建業者等企業情報検索システム』からご覧になれます。」と案内しています。管理会社から聞いた登録番号を、自分の手で照合できる、ということです。
照合の作業自体は難しくありません。手元にある提案書や名刺、契約書に記載された商号と登録番号を控え、検索システムで同じ商号を探します。表記のゆれ(株式会社が前か後か、旧商号かどうか)で見つからないことがあるため、商号は正確に控えておくと確認が早く済みます。
- 商号契約書の記載どおりに控えます。略称や屋号ではなく、登記上の商号を確認します。
- 登録番号提案書、名刺、ウェブサイト、事務所の掲示で示されている番号を控えます。
- 本店所在地同名の会社があるときの手がかりになります。
- 取引の相手方実際に契約する会社と、グループ内の別会社が違うことがあります。契約書の当事者欄で確認します。
記載の確認: 国土交通省「賃貸住宅管理業者情報」、国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(確認日: 2026年9月9日)
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登録と書面を確かめたら
受け取れる書面をそろえてから、管理の条件を比べる
契約前の書面、契約時の書面、定期報告。制度上受け取れるものを確認したうえで、管理の条件を見比べます。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの賃貸管理の入口を見る契約の前と、契約の時に、それぞれ書面がある
国土交通省のポータルサイトは、管理業者の業務として、契約締結前に「報酬及び具体的な管理業務の内容・実施方法等について書面を交付」すること、管理受託契約を締結したときは「相手方に対し、遅滞なく、必要な事項を記載した書面を交付」することを挙げています。
オーナー側から見ると、書面は2回あります。1回目は、契約するかどうかを決める前の判断材料です。2回目は、合意した内容の記録です。役割が違うので、1回目の書面をもらわないまま条件だけを口頭で聞き、契約時にはじめて中身を読む、という順番にはしないほうが読み比べやすくなります。
比較のときに効いてくるのは、1回目の書面です。報酬の額だけでなく、具体的な管理業務の内容と実施方法が書かれるとされているため、複数社から受け取ればそのまま比較資料になります。「どこまでが基本料金か」を口頭で聞き取るより、書面を並べたほうが差が見えます。
記載の確認: 国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「管理業者の業務」(確認日: 2026年9月9日)
定期報告は、頼んで出してもらうものではない
同法第20条は標題を「委託者への定期報告」とし、「賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について、国土交通省令で定めるところにより、定期的に、委託者に報告しなければならない。」と定めています。国土交通省のポータルサイトは、この報告について「少なくとも年1回以上の頻度で物件のオーナーに対し報告」と記載しています。
条文には頻度そのものは書かれておらず、「定期的に」とされています。年1回以上という言い方はポータルサイトの記載です。条文の引用と、解説ページの記載を混ぜないほうが、後で確認するときに迷いません。
実務的な意味は、報告が「サービス」ではなく制度側に置かれた枠組みだという点にあります。報告が届いていない、届いていても入出金の一覧だけ、という状態が続いているなら、それは管理会社を評価する材料ではなく、まず確認すべき事実です。
条文と記載の確認: e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」第20条、国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「管理業者の業務」(確認日: 2026年9月9日)
家賃や敷金の分別管理も条文に置かれている
同法第16条は標題を「分別管理」とし、「賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づく管理業務(第二条第二項第二号に掲げるものに限る。以下この条において同じ。)において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を、整然と管理する方法として国土交通省令で定める方法により、自己の固有財産及び他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭と分別して管理しなければならない。」と定めています。
なお、この条の「管理業務」は、括弧書きにより第2条第2項第2号に掲げるものに限られています。同号は「当該賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務(前号に掲げる業務と併せて行うものに限る。)」です。
条文が分けている相手は2つあります。ひとつは管理業者自身の固有財産、もうひとつは他の管理受託契約で受領した金銭です。オーナーから見れば、自分の物件の入金が、会社のお金や他のオーナーのお金と混ざらない前提で扱われる、という枠組みです。
この点は、送金のタイミングや明細の粒度の話とつながります。毎月の送金日、控除される項目、敷金の扱い、退去時の精算の流れ。分別管理という枠組みがあることを知っていると、明細の見方を聞くときの言葉が具体的になります。
条文の確認: e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」第16条(確認日: 2026年9月9日)
業務管理者は、営業所ごとに選任される
同法第12条は標題を「業務管理者の選任」とし、第1項で「賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、一人以上の第四項の規定に適合する者(以下「業務管理者」という。)を選任して……」と定めています。国土交通省のポータルサイトも「営業所又は事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識・経験等を有する業務管理者を1名以上配置」と記載しています。
会社単位ではなく営業所または事務所ごと、という点が読みどころです。物件の所在地を担当する拠点がどこなのか、その拠点が本店なのか支店なのかは、オーナーの側からは見えにくい部分です。委託契約の相手方と、実際に動く拠点を分けて確認しておくと、連絡の経路がはっきりします。
なお、この記事では特定の会社の優劣は扱いません。制度は、会社の良し悪しを判定する仕組みではなく、業務の枠組みを定めるものです。枠組みを知ったうえで、自分の物件に合う会社かどうかを見るのは、オーナー側の判断になります。
条文と記載の確認: e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」第12条、国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「管理業者の業務」(確認日: 2026年9月9日)
帳簿、従業者証明書、標識も列挙されている
国土交通省のポータルサイトは、管理業者の業務として、帳簿の備付け、従業者証明書の携帯、標識の掲示も列挙しています。日常のやり取りでは意識しにくい項目ですが、現地で作業する担当者や、事務所を訪ねたときに目に入るものです。
たとえば、入居者から「見慣れない業者が建物に入っていた」と連絡が来たとき、従業者証明書という枠組みがあることを知っていれば、管理会社への確認の仕方が具体的になります。制度の知識は、トラブルを解決する道具というより、確認の言葉を持つための材料です。
手数料率を比べる前に、書面の中身をそろえる
管理の見積もりを並べると、率の差にまず目が行きます。ただ、率が同じでも、含まれる業務が違えば実質は変わります。契約前に交付されるとされる書面には報酬と管理業務の内容・実施方法が記載されるため、これを軸にそろえると比較が進みます。
| 見る項目 | 書面で確認すること | 口頭で補うこと | 比較の置き方 |
|---|---|---|---|
| 報酬 | 月額の算定方法、別途費用となる項目の範囲。 | 実際に別途請求が発生した直近の例。 | 率ではなく、年額に直して並べる。 |
| 業務の内容 | 入居者対応、送金、更新、退去精算などの実施方法。 | 夜間や休日の連絡の受け方。 | 含まれる業務と別料金の業務を線で分ける。 |
| 報告 | 報告の頻度と、報告される事項。 | 報告書の実物の見本。 | 見本を1枚もらい、読める粒度かを確認する。 |
| 金銭の扱い | 受領する金銭の範囲と送金の取り決め。 | 送金日と、明細の項目名の意味。 | 入金から送金までの流れを1本の線で書く。 |
表にすると、率の差より項目の差のほうが大きいことがよくあります。安いほうが良いとも、高いほうが手厚いとも言えません。自分の物件で発生している手間が、どこまで含まれるのかを見るための表です。
登録の話と、契約の内容の話を混ぜない
登録は、事業を営むための制度上の要件です。契約の内容は、オーナーと管理会社の間で決めることです。この2つは別の層にあります。登録があることは契約内容が自分に合うことを意味しませんし、登録義務の対象外であることが業務の質を示すわけでもありません。
見直しの場面では、この2つを分けて確認します。まず制度上の枠組み(登録、書面、報告、分別管理、業務管理者)を確認し、次に契約書の条項(業務範囲、報酬、解約の申し入れ、原状回復の扱い、修繕の決裁ライン)を読みます。順番を分けると、話が感情の方向へ流れにくくなります。
同じカテゴリの記事との読み分け
このコラムは制度側の枠組みを整理したものです。空室、修繕、報告、サブリースといった手元の数字から見直しを考える場合は、同じカテゴリの賃貸管理会社を変える前に、手数料より先に見る数字を先に読むと、順番がつかみやすくなります。カテゴリの一覧はT04 賃貸管理の見直し × オーナーから辿れます。
更新時期に確認することを、あらかじめ決めておく
管理委託契約の更新時期は、条件を見直す数少ない機会です。何を確認するかを直前に考えると、結局は前回と同じ条件で更新することになりがちです。更新の数か月前に、確認する項目を書き出しておくと、話し合いの内容が変わります。
- 報告直近1年の報告が手元にそろっているか。報告の頻度と内容が契約どおりか。
- 入出金送金日、控除項目、敷金の扱いが明細から読み取れるか。
- 対応入居者からの連絡が、どの経路でオーナーへ届くか。
- 体制担当拠点と担当者、変更があった場合の連絡方法。
これらは、管理会社を責めるための材料ではありません。任せる範囲を言葉にするための下ごしらえです。範囲がはっきりすると、続けるにしても変えるにしても、条件の話が具体的になります。
報告書は、意思決定できる粒度で読む
報告が届いていても、読み流していることは珍しくありません。入金額と送金額だけを見て終わると、空室の期間や、修繕の発生頻度、入居者からの問い合わせの傾向が見えません。1年分を並べると、月次では見えない変化が出てきます。
見るのは、空室が発生した月と埋まった月、募集条件を変えた時期、修繕が発生した部位と金額、問い合わせが増えた時期です。これらは管理会社への質問の材料になり、同時に、物件を持ち続けるかどうかを考えるときの材料にもなります。
管理の見直しと、保有の判断は別々に置く
管理に不満があるときほど、話が「変えるか、やめるか」に振れがちです。ただ、管理の条件を整えることと、その物件を持ち続けるかを決めることは、別の判断です。管理の条件が変われば収支が変わり、収支が変われば保有の判断も変わります。順番としては、まず条件を整える側から手を付けるほうが、比べる材料が増えます。
制度の枠組みを確認し、書面をそろえ、報告を読める形にする。ここまで進むと、管理を任せる相手に何を求めているのかが言葉になります。言葉になってから外部の入口を見るほうが、条件の違いを読み取りやすくなります。
問い合わせる前に、手元の情報をそろえる
- 物件所在地、戸数、間取り、築年、現在の入居状況。
- 契約現在の管理委託契約の種類、報酬、契約期間、更新時期。
- 実績直近1年の入金と送金、空室期間、修繕の発生状況。
- 希望任せたい範囲、自分でやりたい範囲、連絡の受け方。
この4つがそろっていると、どの相手と話しても同じ前提から始められます。逆に、そろっていない状態で複数社に相談すると、各社が前提を補って提案するため、比較しにくい資料が増えます。
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比較の軸を決めたあとに
手数料率だけでなく、業務の範囲で並べる
報酬と管理業務の内容・実施方法をそろえてから比べると、条件の違いが見えやすくなります。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの賃貸管理の入口を見る