転勤で家を離れるとき、住宅ローン控除は?転居前の届出を確認
転勤の内示が出て、住宅ローンを組んだ家から離れることになった。そのとき気になるのが、毎年の所得税から差し引かれている住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の扱いです。家族が残るのか、家族ごと引っ越すのか、戻る予定はあるのかで、国税庁が示している扱いは分かれます。
このコラムでは、国税庁タックスアンサー『No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等』の記載を、転居前にやることの順に整理します。控除を受けられるかどうかの最終判断は、取得の時期や家族の状況によって変わります。所轄の税務署か税理士に確認することを前提に読んでください。
結論に代えて:転勤の形で扱いが分かれる
No.1234では、転勤で住まなくなる場合を大きく3つに分けて説明しています。家族が住み続ける単身赴任の場合、家族ごと離れて後で戻る場合、そして入居した年のうちに家族ごと離れた場合です。どれに当たるかで、離れている間の扱い、戻ったあとの扱い、転居前に必要な手続が変わります。
表のとおり、手続の差が大きいのは家族ごと離れる場合です。戻る見込みがあるなら、転居の日より前に税務署へ出す書類があります。引越しの準備が始まってから気づくと間に合わないことがあるので、内示が出た段階で自分がどの形に当たるかを確かめておきます。
出典: 国税庁 タックスアンサー『No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)
家族が住み続ける単身赴任の場合
No.1234の説明を要約すると、転勤などのやむを得ない事情で本人が住めなくなっても、家屋の取得等の日から6か月以内に配偶者や扶養親族などが入居し、その後も引き続き住んでいる場合には、本人が引き続き住んでいるものとして控除の対象になりうる、という扱いです。
海外転勤の場合も、平成28年4月1日以後に取得等をした家屋であれば、家族が住み続けていることなどを条件に対象になりうるとされています。ただし、国内に源泉のある所得がある年分に限られるなど条件が加わるため、海外赴任が決まった場合は同じページの原文と、所轄の税務署で確認してください。
単身赴任を選ぶかどうかは、税だけで決めるものではありません。二重の住居費や家族の生活も含めて判断する材料の一つとして、控除の扱いを押さえておく、という位置付けが現実的です。
出典: 国税庁 タックスアンサー『No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)。(1)の記載の要約。
家族ごと離れる場合は、戻ったあとの再適用に条件がある
家族全員で転居し、家に誰も住まなくなった場合、住んでいない間は控除を受けられません。そのうえでNo.1234は、戻って再び住み始めたときに控除を再び受けられる場合を示しています。
要約すると、条件は二つです。一つは、勤務先からの転任の命令など、これに準ずるやむを得ない事由で住まなくなったこと。もう一つは、住まなくなる日までに所定の手続をしていることです。転居してから手続をしようとしても、この条件を満たせないことになります。
戻るかどうかがはっきりしない段階でも、戻る可能性が少しでもあるなら、転居前の手続を済ませておくと選択肢が残ります。一方で、戻らずに売る、あるいは長く貸すという選択肢も同時に並べておくと、転勤先での生活設計が立てやすくなります。
出典: 国税庁 タックスアンサー『No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)。(2)の記載の要約。
広告
売却の価格感
戻るか分からないなら、売った場合の価格感も並べておく
控除の再適用を前提に戻る計画と、売却する場合の見込みを比べるには、自宅の価格感が必要です。外部の一括査定サービスで、複数の不動産会社の見方を確かめられます。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの売却査定フォームへ進む転居前に出す届出書を確認する
家族ごと離れて後で戻る可能性がある場合、No.1234が示す転居前の手続は、『転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書』を、住まなくなる日までに家屋の所在地の所轄税務署長へ提出することです。
会社員で、税務署から交付された年末調整用の住宅借入金等特別控除証明書のうち、まだ使っていない年分のものが手元にある場合は、それも届出書と一緒に提出する扱いになっています。書類を探すのに時間がかかることもあるので、転居の日から逆算して準備します。
- 書類転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書
- 提出先家屋の所在地の所轄税務署長
- 時期住まなくなる日まで
- 添える物未使用分の控除証明書など(交付を受けている場合)
出典: 国税庁 タックスアンサー『No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)。(2)の記載の要約。書類の様式は国税庁ウェブサイトで確認できます。
戻った年に貸していたら、再適用は翌年から
転勤中に自宅を貸していて、戻ってきた年にもまだ賃貸していた期間がある場合、No.1234によると、再適用はその年ではなく、翌年以後の各年になります。貸していた年と住み始めた年が重なると、控除の対象になる年が1年ずれることになります。
もう一つ大事なのは、再適用しても控除期間は延長されない点です。再適用は、もともとの控除期間のうち残りがある場合に限られます。転勤が長くなるほど、戻ったときに残っている控除期間は短くなります。
再適用を受ける最初の年は、確定申告が必要です。No.1234では、住宅借入金等特別控除額の計算明細書と、借入金の年末残高等証明書などを添付するとされています。
なお、入居した年の12月31日までに家族と共に離れた場合については、平成21年1月1日以後の転居であることなどを条件に、転居前の手続は不要で、戻った年の確定申告で転任の事情を明らかにする書類を添付する扱いが示されています。対象になる人は限られるため、当てはまりそうな場合は原文と税務署で確認してください。
出典: 国税庁 タックスアンサー『No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)。(2)(3)の記載の要約。
貸す・売るを考える前に書き出しておく日付
再適用できるかどうか、残りの控除期間がどのくらいあるかは、いくつかの日付で決まります。貸すか売るかを比べる前に、次の日付を一枚の紙に並べておくと、税務署や税理士に相談するときも話が早くなります。
- 取得日家屋を取得した日。家族の入居の6か月の起点にもなる。
- 入居日自分や家族が住み始めた日。控除期間の起点を確認する。
- 転居予定日届出書はこの日までに出す。
- 戻る見込み時期が読めるか、読めないか。貸す期間の決め方に関わる。
- 控除期間の終わり住宅の区分と入居年で異なる。自分の入居年の欄で確認する。
控除の基本的な要件は、No.1211-1で確認できます。令和4年以降に入居した場合、控除額は年末残高等に0.7%を掛けた額が基本で、新築等の日から6か月以内に住み始めていること、床面積が50平方メートル以上(特例居住用家屋等は40平方メートル以上50平方メートル未満)、合計所得金額が2,000万円以下(特例居住用家屋等は1,000万円以下)であることなどが要件です。控除期間は住宅の区分と入居年で異なるため、一覧から自分に当てはまる欄を確かめてください。
住宅ローン契約上、自宅を貸してよいかどうかは、税とは別に金融機関との契約の問題です。この点は転勤で持ち家は売る?貸す?期限があるときに見る順番の「住宅ローン契約と保険の扱いを確認する」の節で扱っています。
出典: 国税庁 タックスアンサー『No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)、国税庁 タックスアンサー『No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等』(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年9月29日)
広告
貸す場合の見込み
控除の残り期間と、貸す場合・売る場合の見込みを同じ表に置く
戻るまで貸すなら、管理を任せる先や賃料の見込みも比較の材料になります。外部サービスで賃貸管理の入口を確認し、売却の見込みと並べておくと判断しやすくなります。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの賃貸管理の入口を見るよくある確認事項
- 単身赴任なら、何も手続をしなくても控除は続きますかNo.1234では、家族が取得等の日から6か月以内に入居し引き続き住んでいることなどを条件に、本人が住み続けているものとして扱うとしています。自分が条件に当てはまるかは、所轄の税務署で確認してください。
- 転居後に届出書を出し忘れたことに気づいたら、どうなりますかNo.1234が示す再適用の条件は、住まなくなる日までに手続をしていることです。出し忘れた場合の扱いは個別の判断になるため、早めに所轄の税務署へ相談してください。
- 戻ったら控除期間はその分延びますか延びません。No.1234では、控除期間は延長されず、残存控除期間がある場合に限り再適用されるとしています。
- 家を貸している間も控除を受けられますか家族が住まず自分も住んでいない間は、控除を受けられません。戻った年に貸していた期間がある場合、再適用は翌年以後です。
まとめ:転居日より前にやること
転勤と住宅ローン控除の関係は、転居の日を境に取れる手続が変わるのが特徴です。家族ごと離れて戻る可能性があるなら、転居前の届出を忘れないこと。戻った年に貸していたら再適用は翌年からになり、控除期間は延長されないこと。この二点を押さえたうえで、貸す・売る・空けておくを比べます。
- 形を確かめる家族が住み続けるか、家族ごと離れるか、入居年内か。
- 届出書家族ごと離れて戻る可能性があるなら、住まなくなる日までに所轄税務署長へ。
- 日付を並べる取得日、入居日、転居予定日、戻る見込み、控除期間の終わり。
- 確認先適用できるかどうかは、所轄の税務署または税理士へ。
あわせて読む
- 転勤で持ち家は売る?貸す?期限があるときに見る順番売る・貸す・空けておくを同じ表で比べる手順を整理しています。
- 転勤中に持ち家を貸す前に、定期借家と普通借家で戻れる条件を分ける戻る時期と賃貸借契約の種類の関係を確認できます。
カテゴリの一覧はT03 転勤 × 戸建てから辿れます。