賃貸用の空き家443万戸の内訳を、共同住宅と一戸建で分けて見る
空室が長引くと、管理会社から「全国的に空き家が増えているので」と説明されることがあります。その説明自体が誤りとは限りませんが、全国の数字がどの建物の、どの種類の空き家を数えたものかを知らないと、自分の物件に当てはまる話かどうかを判断できません。
この記事では、総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査から、賃貸用の空き家の推移と建て方別の内訳を確認します。そのうえで、統計上の空き家と、オーナーが管理会社と話す空室との違いを整理し、話し合いの前に手元で用意しておく数字をまとめます。
賃貸用の空き家は、この20年で増えてきた
総務省統計局によると、2023年10月1日時点の賃貸用の空き家は443万6千戸でした。2003年の367万5千戸から、2008年412万7千戸、2013年429万2千戸、2018年432万7千戸と、調査のたびに増えています。
一方で、空き家全体に占める賃貸用の割合は、2018年の51.0%から2023年は49.3%に下がりました。賃貸用の空き家が増えていないわけではなく、賃貸用以外の空き家がそれ以上に増えたことによる変化です。空き家の総数や、賃貸用以外の空き家の話はこのサイトの別の記事で扱っているので、ここでは賃貸用に絞って読み進めます。
出典: 総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果』(2024年9月25日公表、調査時点2023年10月1日。確認日: 2026年9月29日)(表2-1 居住世帯の有無別住宅数の推移)
賃貸用の空き家の約9割は共同住宅にある
賃貸用の空き家443万6千戸を建物の建て方で分けると、共同住宅が394万7千戸、長屋建が27万1千戸、一戸建が21万3千戸、その他が6千戸でした。共同住宅が約9割を占めています。
ここで注意したいのは数え方です。統計局の注記によると、一戸建以外(長屋建、共同住宅、その他)の住宅数は、建物の中にある一つ一つの住宅の数です。共同住宅の394万7千戸は、建物の棟数ではなく、空いている部屋(住戸)の数です。アパート1棟の中で3部屋が空いていれば3戸と数えられます。
共同住宅の数字が大きいのは、もともと賃貸住宅の多くが共同住宅であるためでもあります。この数字だけから、共同住宅のほうが空きやすいとは言えません。建て方ごとの賃貸住宅の総数に対する割合は、この概要資料からは読み取れないためです。
出典: 総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果』(2024年9月25日公表、調査時点2023年10月1日。確認日: 2026年9月29日)(表2-2 住宅の建て方、空き家の種類別空き家数及び割合)
一戸建の空き家は、賃貸用よりそれ以外の空き家が多い
視点を変えて、建て方ごとの空き家がどの種類に分かれるかを見ます。共同住宅の空き家502万9千戸のうち、賃貸用は78.5%でした。共同住宅の空き家の多くは、入居者を募集している、あるいは募集できる状態の部屋です。
一戸建は逆の構図です。一戸建の空き家352万3千戸のうち賃貸用は6.0%で、80.9%は「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」でした。一戸建の空き家の多くは、貸しにも売りにも出ていない家です。
オーナーの立場で言い換えると、共同住宅のオーナーが向き合う空室は、同じ建て方の賃貸用の空き家が全国に多くある中での競争です。戸建てを貸しているオーナーは、賃貸に出ている戸建て自体が少ない中での募集になります。どちらの場合も、全国の数字は競争環境の輪郭を示すだけで、個別の物件の見通しを示すものではありません。
出典: 総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果』(2024年9月25日公表、調査時点2023年10月1日。確認日: 2026年9月29日)(表2-2)
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管理条件を見比べる
建て方と空室の状況を整理したら、管理会社の条件を並べて見る
自分の物件が共同住宅か一戸建か、何部屋がどのくらい空いているかを整理すると、管理会社に聞くべきことが具体的になります。複数の管理会社の条件をまとめて見たいときは、外部の比較サービスを使う方法があります。管理を受託するのは各管理会社です。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの賃貸管理の入口を見る統計の空き家と、物件の空室は同じものではない
空室の話でよく使われる空室率という言葉は、この調査の用語ではありません。住宅・土地統計調査が示すのは、住宅全体に占める空き家の割合(空き家率)や、空き家の種類別の数です。賃貸物件の空室率のように、賃貸住宅の戸数を分母にして空いている部屋の割合を出した数字とは、分母も数え方も違います。
また、統計上の空き家は調査日時点で人が住んでいない住宅です。入居者の入れ替わりでたまたま空いていた部屋も、長く埋まらない部屋も、同じ1戸として数えられます。統計の数字からは、どのくらいの期間空いているのかは分かりません。
家賃の水準や推移も、空室を考えるうえで気になる数字です。民営借家の家賃の統計は、同じ調査を使って転勤中に家を貸す前に、借家の家賃と広さを統計で確かめるで整理しています。調査の家賃は住んでいる世帯が払っている家賃であり、募集賃料の相場ではない点も合わせて確認できます。
全国の数字を、自分の物件の空室の説明に使わない理由
全国の賃貸用の空き家が増えていることは事実ですが、それは自分の物件が埋まらない理由の説明にはなりません。空室の原因は、立地、築年数、間取り、設備、募集家賃、募集の出し方、内見への対応など、物件ごとの条件の組み合わせで決まります。
管理会社が全国の統計を持ち出したときは、否定するのではなく、自分の物件の数字に話を戻すのが建設的です。たとえば、同じエリアの似た条件の物件と比べて反響数や内見数がどうか、募集条件をいつ、どう変えたか、といった具体的な数字です。全国の傾向は背景として共有しつつ、判断は物件の数字で行うという順番を意識すると、話し合いがかみ合いやすくなります。
反対に、オーナーの側が全国の数字を根拠に、自分の物件もいずれ空くと悲観しすぎる必要もありません。統計は将来の空室を予測するものではなく、調査日時点の状況を集計したものだからです。
管理会社と話す前に、手元で用意する数字
- 部屋ごとの空室日数退去日から次の入居日まで、または現在までの日数を部屋ごとに書き出します。平均だけでなく、長く空いた部屋を特定します。
- 募集家賃の変更履歴募集開始時の家賃と、変更した日付・金額を並べます。条件を変えた後に反響が変わったかを見るためです。
- 反響数と内見数問い合わせの数と内見の数を、月ごとに管理会社から報告してもらいます。内見はあるのに申込みがないのか、そもそも反響が少ないのかで、打つ手が変わります。
- 建て方と戸数共同住宅か一戸建か、何戸のうち何戸が空いているかを確認します。この記事の統計と照らし合わせるときの前提になります。
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売却価格も確認する
管理を続けるか考えるときは、売却した場合の価格感も並べておく
空室の状況と管理の条件を整理したうえで、売却した場合の価格感も並べておくと、賃貸を続ける理由を比べやすくなります。複数の不動産会社の査定をまとめて依頼できる外部サービスがあります。査定は依頼先の会社が行います。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの売却査定フォームへ進む世帯が持つ空き家のうち、貸家用は24.3%
最後に、個人オーナーに近い立場の数字を見ます。同じ調査では、世帯が現住居以外に所有している住宅も集計しています。そのうち空き家になっている住宅は166万2千住戸で、主な用途が貸家用のものは40万4千住戸、24.3%でした。
世帯が持つ空き家のおよそ4分の1は、貸すことを目的に持っている住宅だということです。個人で賃貸住宅を持つオーナーにとって、空室は珍しい出来事ではなく、管理の中で継続して向き合う論点だと言えます。だからこそ、全国の数字に頼るのではなく、自分の物件の数字を記録し、管理会社と同じ数字を見ながら話せる状態を作っておくことが役に立ちます。
出典: 総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果』(2024年9月25日公表、調査時点2023年10月1日。確認日: 2026年9月29日)(表9 現住居以外に所有する住宅の主な用途別主世帯数、住宅数)
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