相続した実家を手放せないと思う前に。相続土地国庫帰属制度の条件と負担金を売却と並べる

相続した実家を「売って手放す」「国へ帰属させる」「持ち続ける」の三つに分ける図

親から相続した実家が、誰も住まないまま空き家になっている。遠くに住んでいて通うのも大変で、「田舎の家だから売れないだろう」と感じ、手続きを後回しにしている。そんなとき、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度ができたらしい、という話を聞くと、これで肩の荷が下りるかもしれない、と思うかもしれません。

この制度は、相続土地国庫帰属制度といいます。ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、申請できる土地の条件や、納めるお金(審査手数料と負担金)が法律で決まっています。建物が建ったままの実家は、そのままでは申請できない、という点も見落とされがちです。

この記事では、法務省のページに書かれている制度の内容と、全国でどれくらい使われているかの統計を整理し、「国に引き取ってもらう」という選択肢を、「売る」「持ち続ける」と同じ土俵に並べて見る順番をまとめます。個別の土地が制度の対象になるかどうかは、この記事では判断しません。

「国が引き取ってくれる」と聞く前に、三つの気持ちを分ける

相続した実家を空き家のまま放置してしまう背景には、いくつかの気持ちが混ざっています。手続きを進めるには、まずその気持ちを分けて眺めると、何から確かめればよいかが見えてきます。実家を前にして立ち止まりやすいのは、次のような三つの気持ちです。

  • 管理の負担と近隣への気がかり草木が伸び、郵便受けがあふれ、台風のたびに屋根や塀が心配になる。遠方だと見に行くだけでも時間と費用がかかる。
  • 「売れないだろう」という思い込み古い家、郊外や地方の立地というだけで、売り出す前から「値段が付かない」と決めつけてしまう。
  • 家族で意見が割れることきょうだいの間で「残したい」「手放したい」が分かれ、言い出しにくいまま時間だけが過ぎる。

「国に引き取ってもらえないか」という発想は、このうち主に二つ目の「売れないだろう」という思い込みから出てくることが多いものです。けれども、国庫帰属の制度には条件と費用があり、売ることと比べてどちらが自分の負担や手取りの面で向いているかは、数字を並べてみないと分かりません。まずは制度の中身を正確に押さえましょう。

相続土地国庫帰属制度とは何か(令和5年4月27日から)

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、その土地を手放して国に引き取ってもらう(国庫に帰属させる)ことを申請できる制度です。法務省のページによれば、令和5年4月27日から始まっています。土地の管理に困っている相続人のために設けられた仕組みです。

ここでの申請ができるのは、あくまで相続や遺贈でその土地を取得した相続人です。売買で買った土地や、自分で建てた家の敷地をこの制度で手放すことはできません。また、申請すれば自動的に認められるわけではなく、法務局(国)の審査を経て承認されたものだけが国庫に帰属します。

実家が空き家になっている人にとっては、土地だけなら引き取ってもらえるかもしれない、という選択肢になりえます。ただし、次の章で見るとおり、建物が残っている土地は、そのままでは申請の対象になりません。ここが空き家の戸建てを持つ人にとって、最初に突き当たる分かれ目です。

出典: 法務省『相続土地国庫帰属制度について』(制度開始 令和5年4月27日。確認日: 2026年10月27日)

まず「申請できない土地」を知る。建物があると申請できない

法務省の概要ページでは、そもそも申請することができない土地(却下の対象になる土地)が示されています。主なものは次のとおりです。

申請できない土地(主なもの)実家の空き家で関係しやすい点
建物がある土地家が建ったままでは申請できない。更地にする必要がある。
担保権や使用収益権が設定されている土地住宅ローンの抵当権などが残っていると対象外になりうる。
他人の利用が予定されている土地通路など、他の人が使うことが決まっている土地。
土壌汚染されている土地土壌汚染対策法上の特定有害物質で汚染されている土地。
境界が明らかでない土地・争いがある土地隣地との境界や、所有権の範囲について争いがある土地。

空き家の戸建てで最初に効いてくるのは、いちばん上の「建物がある土地」です。実家の建物が建ったままでは、この制度は申請できません。国庫帰属を目指すなら、まず建物を取り壊して更地にする、という前提が付きます。取り壊しには費用がかかり、その金額は建物の大きさや立地、工事のしやすさによって変わります。

つまり「国に引き取ってもらう」には、更地にするための除却費用を自分で負担したうえで、次の章の審査手数料と負担金も納める、という順番になります。建物を壊す前に、その家と土地が今どのくらいで売れそうかを確かめておくと、壊してしまってから「売ったほうがよかった」と気づく事態を避けやすくなります。管理の負担が気になる場合の考え方は、空き家になった戸建ては売る?残す?管理の前に見る数字でも整理しています。

出典: 法務省『相続土地国庫帰属制度の概要』(確認日: 2026年10月27日)

承認されない土地と、かかるお金(審査手数料と負担金)

建物を壊して申請できる状態にしても、今度は「承認を受けることができない土地」に当たると、国庫帰属は認められません。法務省の概要ページでは、承認を受けられない土地として、おおむね次のようなものが挙げられています。

  • 崖がある土地一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地。
  • 地上の工作物など土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地。
  • 地下の埋設物など管理・処分のために除去しなければならない有体物が地下にある土地。
  • 隣地と争いになる土地隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地。
  • その他通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地。

申請には、土地一筆当たり14,000円の審査手数料がかかります。さらに、承認を受けた人は負担金を納める必要があります。法務省のQ&Aによれば、負担金は20万円が基本です。ただし、市街化区域等にある宅地や農地、森林の場合は、土地の面積に応じて20万円以上の負担金が必要になることがあります。負担金は、国がその土地を管理するのにかかる10年分の標準的な費用の額を考慮して算定される、という考え方です。

ここまでをお金の面でまとめると、国庫帰属を選ぶには、(1)建物の取り壊し費用(物件によって金額は異なります)、(2)審査手数料14,000円(一筆あたり)、(3)原則20万円からの負担金、という支出が重なります。いずれも土地を手放すために出ていくお金で、手元に代金が入ってくる売却とは向きが逆です。どちらが自分に向いているかは、次の統計と、その先の比べ方の章で並べて考えます。

出典: 法務省『相続土地国庫帰属制度の概要』(確認日: 2026年10月27日)、法務省『相続土地国庫帰属制度に関するQ&A』(確認日: 2026年10月27日)

制度は実際どれくらい使われているか(法務省の統計)

法務省は、この制度の利用状況を統計として公表しています。令和8年10月19日に公表された、令和8年9月30日現在の統計(速報値)によると、申請件数の総数は6,125件、そのうち国庫に帰属した件数は3,231件です。申請件数を地目別に見ると、田・畑が2,372件、宅地が2,135件、山林が928件、その他が690件となっています。

相続土地国庫帰属制度の地目別の申請件数 田・畑2,372件、宅地2,135件、山林928件、その他690件(令和8年9月30日現在) 0 1,000 2,000 件 2,372 2,135 928 690 田・畑 宅地 山林 その他
相続土地国庫帰属制度の地目別の申請件数(令和8年9月30日現在)。出典: 法務省『相続土地国庫帰属制度の統計』(令和8年10月19日公表。確認日: 2026年10月27日)を基に Real Estate 7 Grid が作成

宅地の申請も2,135件あり、実家の敷地のような宅地でもこの制度が使われていることが分かります。一方で、申請した件数がすべて帰属に至っているわけではありません。同じ統計では、却下件数が86件、不承認件数が103件となっています。件数としては多くありませんが、申請しても審査で認められない土地があること、審査には一定の時間がかかることを示しています。

申請から帰属までの件数の差は、審査が続いている途中のものも含まれるため、そのまま「認められなかった割合」とは読めません。ここで押さえておきたいのは、国庫帰属は「出せば通る」とは限らず、建物の取り壊しや費用の負担を済ませたうえで、審査を通る必要がある道だ、という点です。

出典: 法務省『相続土地国庫帰属制度の統計』(令和8年10月19日公表、令和8年9月30日現在。確認日: 2026年10月27日)

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価格から考える

手放せないと感じたら、まず売れるのかと価格を確かめる

国庫帰属や取り壊しを考える前に、その家と土地が今どのくらいの価格帯で売れそうかを、外部の一括査定サービスで確かめる方法があります。査定の依頼は無料で、依頼したからといって売る義務はありません。複数の会社に聞いて見比べることもできます。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。

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国庫帰属と売却を並べて考える(資産としての向き)

「国に引き取ってもらう」「売って手放す」「このまま持ち続ける」。実家の処分には、大きく分けてこの三つの道があります。お金の出入りと必要な手続きを同じ土俵に並べると、どれが自分の状況に向いているかを落ち着いて比べられます。

選択肢お金の向き(主なもの)必要なこと
売って手放す買い手が付けば代金が入る(仲介手数料などの費用は差し引く)まず価格を確かめ、売り方(仲介・買取)を選ぶ
国へ帰属させる取り壊し費用・審査手数料14,000円・負担金(原則20万円〜)が出ていく建物の取り壊し、要件への適合、法務局の審査
このまま持ち続ける固定資産税や管理の費用が毎年かかり続ける定期的な見回り・修繕、近隣への配慮

三つを並べて最初に目を引くのは、お金の向きの違いです。売却は買い手が付けば代金が入ってくるのに対し、国庫帰属は取り壊しから負担金まで、手放すために支出が重なります。「売れないだろう」という思い込みのまま国庫帰属や取り壊しに進むと、本当は買い手が付いたかもしれない家を、費用をかけて手放すことになりかねません。

もちろん、立地や状態によっては、売りに出しても買い手が見つかりにくい土地もあります。その見極めの出発点になるのが、今の価格を知ることです。査定で価格帯が分かれば、売却と国庫帰属のどちらに進むかを、数字をもとに家族で話せます。価格を確かめることは、売ると決めるための手続きではなく、三つの道を同じ物差しで比べるための材料集めです。持ち続ける場合に空き家の管理で起きうることは、管理不全空家等という段階が加わった。指導と勧告で何が変わるかで扱っています。

家族で話す前にそろえる手元メモ

実家をどうするかは、一人で決めるより、きょうだいや家族と事実をそろえて話すほうが進みやすくなります。話し合いの前に、次のような資料と数字を一か所にまとめておくと、感情だけで「残す・手放す」が対立するのを避けられます。

  • 土地と建物の登記の資料登記事項証明書や公図。抵当権などが残っていないか、境界がはっきりしているかの手がかりになる。
  • 固定資産税の納税通知書毎年かかっている税額。持ち続ける場合の負担の目安になる。
  • 建物の情報建築時期や図面、設備の状態。取り壊し費用や売り方を考える材料になる。
  • 相続の経緯と名義誰が相続したか、共有になっていないか。申請や売却の前提になる。
  • 今の価格帯外部の査定で分かる、売れそうな価格の目安。三つの道を比べる出発点になる。

手順としては、まず今の価格帯を確かめ、次に国庫帰属の要件に当てはまりそうかを法務局や専門家に相談し、必要なら取り壊し費用の見積もりを取り、最後に家族で「出ていくお金」と「入ってくるお金」を並べて話す、という順番が整理しやすいでしょう。制度の細かな要件や申請の手続きは、法務局の窓口や法務省のページで確認してください。取り壊しや改修に使える自治体の補助金の有無は、実家のある市区町村の窓口やページでも確かめられます。

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手放し方を並べる

現況のまま手放すなら、買取の入口も並べて見る

更地にして国庫帰属を目指すほかに、建物を残したまま買い取ってもらう形もあります。売却査定とあわせて買取の入口も見ておくと、手放し方を並べて比べやすくなります。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。

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